こころの傷つきのケア

私たちは、様々なことで傷つきを経験します。

小さい傷もあれば、時には深い傷もあったり。

一方で、人のこころは強くて、少しくらいの傷なら跳ね返すことが出来て、自分で回復する力を持っています。

そうやって、明るい未来を思い描いたり、傷つきを頑張る糧にしたりしています。

しかし、繰り返された傷つきや大きな傷つきは、簡単には癒すことが出来なくなっていきます。

こころの傷つきを『トラウマ』と言いますが、それによって生きにくさを抱えて

いたり、調子を崩したり・・。

『トラウマ』は無くならないもの。消えないもの。そんな風に諦めていませんか?

でも大丈夫です。『トラウマ』は必ず乗り越えられます。

まずは、それを可能にしてくれる心理療法があることを知ってください。

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)は、多くの国が発表するPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療ガイドラインに「実証された最も効果がある心理療法」の1つとして認められている心理療法です。

トラウマは脳に焼き付いた記憶・体験であって、今起きている現実ではありません。それを脳と身体がきちんと認識すれば、トラウマ体験は終わります。

トラウマを意識しながら、25往復程度の素早くリズミカルな眼球運動(もしくは両側性の刺激)を繰り返し行います。これによって、否定的な記憶が、脳内にもともと貯蔵されている肯定的なネットワークと連結され、心理的苦痛が和らいでいきます。

予想以上に劇的な効果を発揮することもしばしばあり、トラウマケアには欠かせない心理療法の一つと言えます。

近年、NHKや各種メディアで取り上げられる機会も多くなってきており、現在最も注目されているトラウマケアの技法の一つと言えるのではないでしょうか。

※なお、注目度が高い事を利用し、公式トレーニングを受けていないのにEMDRが出来ることを謳っているカウンセラーがいたり、動画サイトなどで左右に動く光を見ているとトラウマがケアされるなど、間違った、そして危険な情報も公開されていますので、くれぐれもご注意ください。日本EMDR学会の公式サイトで治療者リストが確認できますので、ご参照ください。

Somatic Experiencing®(SE療法)

元々、カウンセリングでは語ることが重視されてきたため、語るのが苦しい、語りたくない、身体が拒否する、と言った側面にアプローチする技術の発展が遅れていました。

SE療法(『Somatic』とは『身体の』、『Experiencing』は『経験』という意味で、アルファベットの頭文字から『SE』と略します)は、人間が動物と同じ様に持っている「身体感覚」に主にアプローチし、トラウマ体験について「言葉で」語ることは重視されません。

動物は、身の危険を感じると、まずは『逃げる(Flight)』か『闘う(Fight)』かの反応を起こします。

そして、逃げきれないし、闘っても勝てないと本能が認識した時、『凍り付き(Freeze)』反応が起こります。

人も同様の仕組みを持っており、この『凍り付き』反応が、トラウマとなって残存していきます。

『凍り付いた』トラウマを、『逃げる』『闘う』といった本能の方略を使って解放していくことで、脳や身体でやり残したことを完了させていきます。

(※日本SE協会(SE JAPAN)の公式サイトで、トレーニングを完了したプラクティショナーリストを確認することができます)

Brainspotting

深い感情の問題を扱う時には、脳の深部(大脳辺縁系〜脳幹)への働きかけが必要です。EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)が眼球運動によって脳の新皮質から深い部分に働きかけるのに対して、Brainspottingは大脳辺縁系や脳幹といった深い部分にダイレクトに働きかけていきます。

どちらが効果的かというよりは、状態によって使い分けた方が良いというのが、臨床で実践しながら感じているところです。

いずれにせよ、深い意識が変化することによって、根本的なトラウマが解消されたり、心理的なことから発生している痛みなども解消されることがあります。

日本ではまだまだ実践している臨床家の数の少ない心理療法ですが、少しずつ世の中に浸透していくと嬉しいと考えています。

ボディコネクトセラピー

ボディコネクトセラピー(BCT)は、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)BrainspottingSomatic Experiencing(SE)、TFT(思考場療法)など、トラウマケアに有効な心理療法のエッセンスを集約した、最新の心理療法の一つです。

上記の心理療法でも改善しなかった人への適用も想定され、今後研究が積み重なっていけば、様々な症状への介入が可能になってくると考えられます。

(以下、ボディコネクトセラピーのHPからの引用)

愛着理論、ポリヴェーガル理論を下敷きにし、海外のエネルギー心理学(タッピング)や東洋医学の科学的な研究、眼球運動(両側性を主流とした刺激ではない)、ボディワークを活用しており、統合的心理療法と言える。

(引用ここまで)

実施していると、相談者様への負担が少なく、優しく棘を抜いていくように変化が起きることが多いように感じます。

実際的には、BCTのみを行っていくというよりは、上記のそれぞれの心理療法の長所と相談者様への適性を組み合わせて判断し、実施していくことになります。