心理療法を効果的に受ける

統合的なアプローチの必要性

臨床の現場に出てから、これまで色々な心理療法を学んできました。そして分かってきたことがあります。それは、特定の心理療法だけでは、本当の意味で良くなることはない、ということ。このことに気づくのに、大分時間がかかってしまいました。

人の『こころとからだ』は、どこかで切り取れるものではなく、有機的に繋がりを持っています。その人に合った関り方、その人の症状やニーズに最適な進め方、実際には様々であるはずで、本当にクライエントさんを良くするために、カウンセラーが身に付けなければならないことが沢山あるはず。

当オフィスでは、様々な心理療法・技法を臨機応変に組み合わせながらカウンセリングを行い、統合的な改善を目指していきます。また、これからも常に新しい良いものを取り入れながら、進化していきます。

以下、全てではありませんが、心理療法の紹介をしています。参考にしていただければと思います。


こころの傷つきのケア

私たちは、様々なことで傷つきを経験します。小さい傷もあれば、時には深い傷もあったり。

一方で、人のこころは強くて、少しくらいの傷なら跳ね返すことが出来て、自分で回復する力を持っています。

そうやって、明るい未来を思い描いたり、傷つきを頑張る糧にしたりしています。しかし、繰り返された傷つきや大きな傷つきは、簡単には癒すことが出来なくなっていきます。

こころの傷つきを『トラウマ』と言いますが、それによって生きにくさを抱えていたり、調子を崩したり・・。『トラウマ』は無くならないもの。消えないもの。そんな風に諦めていませんか?

でも大丈夫です。『トラウマ』は必ず乗り越えられます。まずは、それを可能にしてくれる心理療法があることを知ってください。

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)

多くの国が発表するPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療ガイドラインに「実証された最も効果がある心理療法」の1つとして認められています。

トラウマは脳に焼き付いた記憶・体験であって、今起きている現実ではありません。それを脳と身体がきちんと認識すれば、トラウマ体験は終わります。

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)は、トラウマを意識しながら、25往復程度の素早くリズミカルな眼球運動(もしくは両側性の刺激)を繰り返し行います。これによって、否定的な記憶が、脳内にもともと貯蔵されている肯定的なネットワークと連結され、心理的苦痛が和らいでいきます。

予想以上に劇的な効果を発揮することもしばしばあり、トラウマケアには欠かせない心理療法の一つと言えます。

近年、NHKや各種メディアで取り上げられる機会も多くなってきており、現在最も注目されているトラウマケアの技法の一つと言えるのではないでしょうか。

※なお、注目度が高い事を利用し、公式トレーニングを受けていないのにEMDRが出来ることを謳っているカウンセラーがいたり、動画サイトなどで左右に動く光を見ているとトラウマがケアされるなど、間違った、そして危険な情報も公開されていますので、くれぐれもご注意ください。日本EMDR学会の公式サイトで治療者リストが確認できますので、ご参照ください。

Somatic Experiencing®(SE療法)

元々、カウンセリングでは語ることが重視されてきたため、語るのが苦しい、語りたくない、身体が拒否する、と言った側面にアプローチする技術の発展が遅れていました。

SE療法(『Somatic』とは『身体の』、『Experiencing』は『経験』という意味で、アルファベットの頭文字から『SE』と略します)は、人間が動物と同じ様に持っている「身体感覚」に主にアプローチし、トラウマ体験について「言葉で」語ることは重視されません。

動物は、身の危険を感じると、まずは『逃げる(Flight)』か『闘う(Fight)』かの反応を起こします。

そして、逃げきれないし、闘っても勝てないと本能が認識した時、『凍り付き(Freeze)』反応が起こります。

人も同様の仕組みを持っており、この『凍り付き』反応が、トラウマとなって残存していきます。

『凍り付いた』トラウマを、『逃げる』『闘う』といった本能の方略を使って解放していくことで、脳や身体でやり残したことを完了させていきます。

(※日本SE協会(SE JAPAN)の公式サイトで、トレーニングを完了したプラクティショナーリストを確認することができます)

Brainspotting

深い感情の問題を扱う時には、脳の深部(大脳辺縁系〜脳幹)への働きかけが必要です。EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)が眼球運動によって脳の新皮質から深い部分に働きかけるのに対して、Brainspottingは大脳辺縁系や脳幹といった深い部分にダイレクトに働きかけていきます。

どちらが効果的かというよりは、状態によって使い分けた方が良いというのが、臨床で実践しながら感じているところです。

いずれにせよ、深い意識が変化することによって、根本的なトラウマが解消されたり、心理的なことから発生している痛みなども解消されることがあります。

日本ではまだまだ実践している臨床家の数の少ない心理療法ですが、少しずつ世の中に浸透していくと嬉しいと考えています。

ボディコネクトセラピー

ボディコネクトセラピー(BCT)は、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)BrainspottingSomatic Experiencing(SE)TFT(思考場療法)など、トラウマケアに有効な心理療法のエッセンスを集約した、最新の心理療法の一つです。

上記の心理療法でも改善しなかった人への適用も想定され、今後研究が積み重なっていけば、様々な症状への介入が可能になってくると考えられます。

(以下、ボディコネクトセラピーのHPからの引用)

愛着理論、ポリヴェーガル理論を下敷きにし、海外のエネルギー心理学(タッピング)や東洋医学の科学的な研究、眼球運動(両側性を主流とした刺激ではない)、ボディワークを活用しており、統合的心理療法と言える。

(引用ここまで)

実施していると、相談者様への負担が少なく、優しく棘を抜いていくように変化が起きることが多いように感じます。

実際的には、BCTのみを行っていくというよりは、上記のそれぞれの心理療法の長所と相談者様への適性を組み合わせて判断し、実施していくことになります。


催眠療法(臨床催眠)

日本では、『催眠療法』という言葉が、少し怖い感じや怪しい印象を含むようで、一般的には敬遠されがちかもしれません。

臨床家の中でもそういう風潮はあり、実際一部の臨床家のみが行う心理療法となってしまっています。

催眠については、定義が様々のようで、また扱う立場によって色々な言い方をします。

催眠療法、ヒプノセラピー、場合によっては催眠術、など・・。怪しいものも実際は、沢山あります(資格も曖昧で、高額な料金を請求される場合は、要注意です)。 

不調の回復、症状の改善、緊張や不安の緩和などを目的として実施する当オフィスの催眠は、「臨床催眠」という言い方が適切かと思います。

「催眠」を適切に利用すると、こころのもつれを解いたり、行動の型・パターンを修正したりすることが可能です。

催眠療法(臨床催眠)には、100年以上の知見の蓄積のある手法もあれば、近年開発された自我状態療法、ホログラフィートークなどの技法もあり、心葉ではこれらを適宜組み合わせて使用することで、より高い効果を出すことを心がけています。 

『興味や期待はあるけれど、不安・・』

とういう相談者様がほとんどで、「催眠術をかけるんですか?」「記憶が無くなるんですか?」などの質問を受けますが、テレビでしばしば見られるようなショー催眠とは違います。

相談者様との共同作業として、催眠状態を作り上げていきます。

記憶が無くなることはありませんし、ゴールをはっきりさせて進める科学的な手法と言えます。

前世療法のようにスピリチュアルなイメージが付いているものもありますが、あくまでも相談者様の自己治癒力を活性化させることが目的です。

催眠状態により深く入ることが出来れば、その効果も大きくなります。

比較的早くその状態に至る方もいれば、回数を重ねてその状態に至る方もいます。

仮に催眠状態に入ることに不安を感じていたら、それがそのままカウンセリングに反映されますので、催眠状態には入れません(ご本人が催眠状態に入りたがっていても、です)。そんな時はまず、不安な気持ちを整理し、準備を整えていきます。

逆に、改善したい強い気持ちがあって、カウンセラーへの信頼も高まっていれば、スムーズに催眠状態に入っていくことができます。そういう意味で、他の心理療法以上に、相談者様とカウンセラーの協力関係が重要な心理療法とも言えます。


自我状態療法

自我状態療法とは催眠療法の一つで、心の葛藤や課題などを、顕在化(人格化)させ、軽催眠状態で解決まで対話を行っていく技法です。ご希望にもよりますが、インナーチャイルドセラピーを受けたいという方のニーズにも対応出来るように思います。

ホログラフィートーク

催眠療法の一つで、「心の課題が人生のどの時点で発生し、当時何を解消・解決したかったのか」、その源泉に優しく触れていくことで、本当の癒しに至ります。日本で開発された画期的な技法であり、今なお進化し続けている技法です。

※よろしければ、こちらのブログの記事もご参照ください。


心身を調整する

『こころとからだ』は繋がっています。でも、日本の臨床やカウンセリング(心理療法)では、『こころ』ばかりが注目されがちで、『からだ』への視点が不足してきた歴史があります。

話を聴いてもらって、ちょっとすっきりする。でも、ホントは腑に落ちていない。そんなことありませんか?

逆に、頭ではまだ整理出来ていないけど、ケアをしてもらったら身体が軽くなった、なんてこともあったり。

心葉では、『こころとからだ』の結びつきを、とても重要視しています。

紹介させていただいているTFT(思考場療法)、ブレインジム以外にも、ハンズオン(手当て)によるセルフケア、身体面からのアプローチなどを行っています。

TFT(思考場療法)

東洋医学を元に開発されたユニークな心理療法です。鍼灸でいう経絡上のツボをタッピングすることで心理的問題の症状を改善させていきます。手順が簡単な上に、効果が高く、即効性があり(早くて数分)、副作用がなく、セルフケアに使えるという長所が多いのも特徴です。

医学的な治療を妨げ ることがないため、がんや疼痛などの治療と併用して用いることができ、むしろ他の治療の効果も高めます。

身体のツボを自分でタッピングするだけという、一見簡素な心理療法ですが、使いこなす(適用範囲を広げる)には、研鑽を積んでいく必要がある技法と思います。

とは言うものの、一旦手順を覚えてしまえば、誰でもいつでも日々の困りごとに対しても使えるため、非常に便利で効果的な技法といえます。

ブレインジム

アメリカ人の教育学博士であるポール・デニソン氏によって開発された、身体を動かして脳を活性化させるエクササイズです。簡単な動作を行うだけですが、身体が楽になったり、意識が変わり、行動に変化が現れます。日常のセルフケアにもとても有効です。

応用の仕方次第で、子どものトラウマケア、発達障害の機能改善、高次脳機能障害の改善、などにも効果があると言われています。

どちらかと言えば、心理の専門家よりも、学校の先生など教育の専門家の方々の方が馴染みがあるのかもしれませんが、身体に働きかけて、それと共に脳へアクセスをかけていくというのは、心のケアの根底にあることと同じだと思っています。

大人になっても赤ちゃんの頃の原始反射が残っていたり、心配性や過敏さや傷つきやすさの背景に、まだ発達しきっていない心身の領域が存在するということが、意外とあるようです。それらを一つ一つひも解いていくと、滞っていた発達が進み始めます。


対話によるケア

カウンセリングの最も中心となるのが、この対話によるやり取り。じっくり、しっかりと話を聴いてもらう。

すると、立ち直りの力が湧いてきます。そもそものカウンセリングの目的は、ここにあります。

ですが、ただ傾聴してもらっても、その時はすっきりしても、実は根本は変わりません。

『分かってもらった』ことは、救いになります。でも、解決にはなりません。

本当に必要なのは、肯定的な支持の上での『気づきと変化』。

そのために、時には新しい考え方を提案したり、振り返ってみたり、新しい行動を試してみたり。必要なのは、こころに響く対話。軸が気づけば動いてしまうような対話。

それを共有していきます。

対応方法として、来談者中心療法、認知行動療法、解決志向アプローチなど、心理療法の紹介を書いてあります。

ですが、○○療法だから良くなる、ということはありません。

本質は、そこではないのです。

心理療法は、その人が、良くなっていく、改善していく、新しい自分になっていく、そのための手段に過ぎません。

誰だって、思いますよね。良くなりたいって。

会話は、人間ならではの財産。特権。能力。

でも、諸刃の剣。

対話は、最も難しい心理療法だと感じます。大切なことを見落とさないために、この対話へのアプローチは、いつまでも心がけたいと思ってます。

来談者中心療法

相談者様の話をよく聴き、自身のことをどう感じ、どのように生きつつあるか、相談者様を共感的に理解していきます。どこに悩みの根本があるのか、じっくりお話を伺います。

一般的にカウンセリングと言えば、このスタイルをイメージされる方が多いように思います。考えを深めたり、内省しながら答えを出していきたい方に適した方法です。

誠実な印象を与える療法ですし、日本人の精神にフィットするため、カウンセリングそのものが日本に入ってきた当初は非常に流行りました。また現在もこの療法を主としているカウンセラーも多いようです。しかし、安易な傾聴の繰り返しによって何も変化が起きなかったり、あるいはカウンセラーが適応を誤ると状態が悪化することも指摘されています。

心葉のカウンセリングでは、最善の改善を目指すため、この療法は主としては実施しません。状態を適切に見立てた上で、必要があればこのスタイルを取り、そうして相談者様が本当に必要なケアが受けられるようサポートしていきます。

認知行動療法

何でいつもこうなってしまうんだろう・・。

自分を認める、なんて出来ないよ・・。

何をやったって自分なんか駄目だ・・。

そう、いつも辛いときに頭に浮かんでくる「認知(考え方のクセ)」、いつもやってしまうその「行動」。

これらに焦点を当て、これまでとは違った観点から問題を捉え直していく心理療法です。

「認知」「行動」に焦点を当てますので、「認知行動療法」と言われるようになりましたが、それぞれ特化して、認知療法、行動療法という形で単独で行われることもあります。

カウンセラーとチームを組んで、スモールステップで具体的な目標を立て、少しずつ階段を登っていくように問題を解決していきます。

認知行動療法は、限定的ではありますが、医療機関で保険適用されるようになり、現在最も知名度が高い心理療法の一つと考えられ、相談者様のニーズも多いように思います。

ただ、どんな心理療法も万能ということはありません。

何がその人の悩みの解決に向いているか、きちんとお話を伺ってからでないと判断できない面もあります。

初回カウンセリングでは、相談者様の状況をお聞きし、それぞれの心理療法の適用などについても分かりやすくお話しし、どのように進めていくのが良いか、一緒に考えさせていただきます。

なお、最近は、マインドフルネスという手法が認知行動療法の一側面として取り入れられてきており、企業などのセルフケア研修でもトピックの一つとして扱われるようになってきました。

当オフィスでは、マインドフルネスのレクチャーやその要素を適宜取り入れながら、認知行動療法を行っていきます。

※マインドフルネスは、ヨガや禅の瞑想を元に開発されたもので、継続的に行う事によって、脳が発達・成長し、心のバランスを取り戻すだけでなく、集中力や記憶力、免疫力など様々なことに良い効果が出ることが分かっています。

解決志向アプローチ

このアプローチの最大の特徴は、通常は焦点を当ててしまう「問題やその原因、改善すべき点」を追求せず、解決に役に立つ「リソース=資源(能力、強さ、可能性等)」に焦点を当て、それを有効に活用することにあります。

「何がいけないのだろう?」と考える代わりに「自分が望む未来を手に入れるために、何が必要なのだろう?何が出来るのだろう?」と考え、解決を創り上げていきます。

この技法の長所は、少ない時間で解決に至る、という点にあります。短所や問題に直接手はつけませんが、とにかく迅速に現状を変えていくことを期待される場合に、非常に有効な方法だと思います。