久々のブログの記事。
どんなことを書くと、読んでいただいた方の役に立つのかな~と思って。
心理療法のこととか、疾患のこととか、色々な心理学的な知識などを書くことも出来るけど、実際のところ、〇〇セラピーとか、〇〇メソッドとか、今はネットや書籍などで情報が溢れているので、そうした知識にアクセスしようと思えば、断片的な情報には比較的簡単に行きつくことが出来る。
なので、ここでそういうことを書いても、あまり意味がないし。
その一方で、当オフィスには、「EMDRを受けたいです」、「ソマティック・エクスペリエンスを受けたいです」「催眠に興味があって」、「トラウマをケアしたい」などのニーズで来られる方も多く、中には本当によく調べて、勉強して、専門家でも驚くくらいの知識を持ってこられる方も、まれにいらっしゃます。
でも一般的には、『カウンセリングって何なのか』とか、『どうしたら症状が良くなるのか』とか、肝心なところ、本質的なところを教えてくれる情報ってあまりなくて、『〇〇すれば絶対痩せる』『ガンは〇〇したら治る』みたいな認識になっていることが多い。
そして、カウンセリングと言っても、カウンセラーによってやり方は違うし、検索して色々とHPを調べてみても、それぞれの違いがそもそもよく分からなかったり。
著作も沢山あるような名の知れたカウンセラーさんのとこに行ったら傷ついた、とかも聞くし。
医療機関を長年受診されている方も来られたりしますが、「主治医の先生から、どうすると良くなっていくか説明を受けていますか?」と聞くと、ほとんどの方は、「うーん・・」とか「いや、特には・・」と答えます。
もちろん、薬の効果の説明はあると思いますし(ないことも実際にあったりするけど・・)、「よく眠りましょう」とか「考えにとらわれ過ぎないように」などのアドバイスを受けていることもありますが、でもこれは『どうしたら良くなるのか』に答えてはいません。
そして、何らかの専門家にサポートを受けている方は、それでも頼れる所があるので、薬を処方してもらったり、話を聴いてもらったり出来ますが、まだどこにも繋がれていない方の場合、もう迷子です。
カウンセリングはそういった状況の人のお役にも立てるのですが、カウンセラーの中には、「どうなると良くなるのですか?」という問いに答えられない方もいるみたいで。
こんなことを考えていて、そうか、良くなるってどういうことなのか、大切なことをちゃんと書いてみたら良いのかも、と思いました。ネットや書籍には書かれていない、本当のことについて。
ということで、カウンセリングって役に立つのかなと疑問を持っている方、カウンセリングを受けた経験はあるけれど効果がよく分からなかったという方(要はカウンセラーがすべってるわけですが)、支援者という立場の人に相談したら逆に苦しくなった方、などなどの人達のために、良くなるカウンセリングで何が起きているのか、を出来るだけ分かりやすく書いてみようと思います。
まず、心理学等の発展により、近年特に良い心理療法がどんどん開発されています。
これはとても良いことで、クライエントさんの利益になりますし、カウンセラーもより良いスキルを手にする切っ掛けを得ることができます。
新しいものが全て良い、というわけではないですが、少なくともより良いものを提供できる状況が出来てきているのは良いことですね。
自分も新しいものを学ばなければと思って、何年もお金も沢山かけて学んできました。
開業する時(2016年11月)には、自分なりに自信を持って臨んだわけです。
で、上手くいくこともあれば、当たり前ですが、上手くいかないこともあって。
そしてその度に、また必要なことを学んで。
延々とそれを繰り返して、レベルアップしなければ、と常に上を向いて。
でもね、ある時思うわけです。
これって、本当にレベルアップしてるのか?と。
気になっていた頃、あるカウンセリングについてのデータを(また聞きにですが)知りました。
それは、『カウンセリングが波に乗るまでの実情』。
カウンセリングを1回だけ受けて気持ちの整理をしたり、方向性の整理が出来ればいいな、と思っている場合は除いて、基本的には、その人の辛さには何が影響しているのか見立てて、それを受けてカウンセリングの方針を立てて、少しずつ改善をしていく、というのが流れです(もちろん、1回で良くなればどんなに良いことか、とは思いますが、そんなミラクルなことは起きません)。
ですので、何回という回数は明確に出来なくても、ある程度の回数が必要と言えます。
でも、お金を払って来ていただくのに、的が外れたことをしてしまうと、必要な回数を継続してもらえません。そう、改善する前に、途中でカウンセリングをやめてしまわれます。
これは当たり前ですね。
ラーメン頼んだら、思ってたのより不味かったり、想定外のうどんが出てきたら、「ん?」と思いますよね。
だから、ちゃんとその人に合ったプロセスを説明し、納得してもらって、かつ効果も出し続けていく。これによってカウンセリングは継続し、ゴールに向かっていくことができます。
で、データですが、その本質は、ずばり『カウンセリングの継続率』。
データの概要はこんな感じです。
初回カウンセリングに来ていただいた人が、2回目も来てくれるのは6割。
そして、2回目来てくれた人が、3回目も来てくれる割合は、またその6割。
つまり、0.6×0.6=0.36⇒カウンセリングを3回目まで来てくれる人の割合は、わずか36%。これが平均的な(?)カウンセリングの継続率ということみたいです。
データはここまでです。
なので、4回目以降がどうなのかははっきりしません。仮に4回目に来てくれる人の割合も6割だったとすると、0.36×0.6=0,216⇒4回目の継続率は22%くらい・・。
ま、4回目は仮の話なので、脇に置いておきますが、一先ず3回もカウンセリングを受ければ、そのカウンセリングを受けることで良い方向に行きそうかどうかの手ごたえが分かる、ということは言えるのかなと。
イマイチだなとか、ダメだなこのカウンセラー、と思ったら、そりゃ辞めますよね。
そして、このことから見えてくるのは、3回目までにカウンセリングを辞めてしまった64%の人達が、カウンセリングをどう評価しているか。
多分、『役に立たないな』とか『カウンセリングなんてこんなものか』と思ったことでしょう。そして、次のカウンセラーを探してくれればまだいいですが、そこで諦めてしまったら・・。
カウンセリングに限らないですが、良いな、と思う店に出会ったら、次も行く。ダメだな、と思ったら行かない。当たり前の事実。ここをカウンセラーも正面から向き合う必要がある。
ふむふむ、と思って、開業1年目の自分はどうだったか、ドキドキしながら、3回目までの継続率を計算してみました。
結果は・・・
70%。
おお。
ちょっとホッとしつつ、まだ改善の余地があったんだなと思いました。
開業してからも毎年毎年色んなことを学んで、レベルアップして、知識も増えたのだから、その後はもっと継続率は上がっているだろう。
さてさて、どのくらい上がったかな?
そう思って、これを知った5年目の時、継続率を計算してみました。
その結果・・・
70%。
どーん。何てこと!?
変わってないじゃん。偶然にも程がある。全く同じって・・。
あれだけ勉強したのに、知識も付けたはずなのに。結果が伴っていない。
筋トレ沢山やって、体重も増えたはずなのにホームランが増えない野球選手のよう・・。
何でだ!?何かがおかしい。
本当に役に立つカウンセリングを提供するには、ただ心理療法を学んだり、知識を身に付ければ良いんじゃなくて、何か違う要素があるのでは・・。そんなの、誰も教えてくれなかったぞ・・。
そう気づいてしまって、僕はこれまでとは違う臨床を模索し始めました。
もちろん、これまで学んだことをベースにしながらですが、今、目の前にいる人の役に立つことを考えて、トライアルアンドエラーを繰り返しました。
そして1年後。
開業から6年目の継続率は・・・
91%。
おお!上がった(喜)!!
うん、間違っていない。この方向性。
そして、やっと(汗)、このブログの記事の本題。
良くなるカウンセリングでは何が起きているのか。
大事な要素を書いていくと・・・
①傷ついている人を更に傷つけない
当たり前だろ、と突っ込まれそうですが、正しいカウンセリング、正しい心理療法、っていうのをやろうとすると、クライエントさんを置き去りにします。
時には、大学や研修で学んだこととズレてしまっているとしても、クライエントさんに寄り添う。この勇気が、カウンセリングの場で出せるかどうか。
世界中がこの人を見捨てたとしても、自分だけは見捨てない、と思えるかどうか。ここが優しさを生みます。これが出来なくて、カウンセラーの価値なんかないですよね。
②その人の強みを見つける
支援者という立場にいると、つい問題を探して、それを解決しようとしてしまう。もちろん、良かれと思って。それが必要なタイミングの人もいますので、そういう時は全力で問題解決に向かいます。
でも、本当に大切なのは、問題が起こったとしてもそれを乗り越える力を付けることです。心の中にそれを創っていくことです。
そのためのツールとして、〇〇療法が適切なことはありますが、〇〇療法が大切なのではありません。
大切なのは、その人が持っている強みを引き出すこと。仮に、もし今は強みがなかったとしても、とにかく畑に種を植える。そして、水をかけて根が出て、芽が出て。
そうしていけば、必ず、上へ上と伸び、葉が開き、花が咲き、実を結びます。問題がゼロになるなんてありえません。でも、強みを創って立ち向かうことは、無限に出来ます。
③カウンセラーのあり方(世界観)がクライエントさんに伝播する
クライエントさんを良い方向に導いてあげたいとして、カウンセラーのあり方が未熟だと、そこまでしか導いてあげられません。
カウンセリングが上手く行かない時に、厳しい言葉をいただくこともあります。その時に、『そうだな』と思って、受け止める力。時には凹んでしまうこともありますが、そうなっても、そこから持ち直す力。
自分で自分を癒すことを知っているカウンセラーでなければ、人のことは癒せません。辛い状況を癒した経験がなければ、人は救えません。未来への希望を語れないカウンセラーでは、誰かを導けません。道を切り開いていないカウンセラーでは、誰かにアドバイスは出来ません。泥にまみれたことがあるから、その渦中にいる気持ちが分かるんです(もちろん、カウンセリング中に直接は言いませんが)。
クライエントさんが抱えているものが沢山あるなら、それを抱えられるだけの器がカウンセラーには必要で。クライエントさんの人生のペースに歩調を優しく合わせ、更にクライエントさんの心の荷物を一緒に抱える。
時には、カウンセラーが歩いている背中を見てもらう。そうして感じてもらう。必要なことを。
④学問の枠を超えてサポートする
これは以前のブログでも書いたことですが、大切なことは心理学の中にだけあるのではありません。これまでカウンセラーが学ばなかった分野の中に大切なことが隠れていたり、カウンセリングに広がりを持たせるようなことがあったり。
これまでのカウンセリングの常識とは違う、誰もやったことがないことをすると、必ず後ろ指を指す人がいます。でも、本質が認められる未来は必ずやってくる。必ず。
今の位置に満足したら、そこまで。
何年後か、何十年後かはちょっと分かりませんが、多分、話を聞いて相談に乗るという意味での『カウンセラー』という職業は衰退していきます(誤解のないように書いておくと、その一方で、心理士(師)という専門職へのニーズはどんどん増え、仕事の種類・活躍する分野は広がっていくと思います)。
その代わり、『治療者』のような、ちゃんと治せる(直せる)職業が出てきます。それが良いかどうかは置いておいて、職業の名前は何でも良いので、躊躇なく学問の枠を超える人が増えてくると良いなと思います(余談ですが、ちゃんと治せる・直せるカウンセラー養成講座の発想はここから来ています)。
何だか書いていて、熱くなってきた(笑)。
⑤脳と身体の働きを調整する
全ての心理療法やカウンセリングは、ここに行き着きます。臨床心理士・公認心理師なので、治療という言葉は使えないのですが、でも、感覚的には治療しているんです。心の中で思うだけで、直接言わないですけど。
まずは、自律神経系の調整力をどう創っていくか。人として生きていくベースは、脳の中でも脳幹という深い部分です。ここが心臓を動かし、呼吸をし、食べ物を消化し、身体を回復させ、人を安心させる。崇高なアドバイスなんか必要ない。ここにアクセスし、日々生きていく上での工夫を一緒に検討する。
子どもが泣いているとして、優しくそばに居続けてあげると、いつしか泣き止む。大人の心も本当は同じ。
そうして、そうしてもらった経験が積み重なって、優しさを学び、誰かにしてあげることが出来るようになる。それが自己治癒力を形作って、誰かに繋がっていく。癒しの連鎖の始まり。
⑥傷ついた子どもの自分をケアする
そして、その次は、自分の中の色んな自分(自我状態とか、パーツなど言うこともあります)のケアをしていく。治りたい(直りたい)のに抵抗する自分、頼りたいのに助けの手を突っぱねてしまう自分、本当は泣きたいのに歯を食いしばる自分、本当はお父さんやお母さんに助けてもらいたかったのにそれが出来なかった自分。
傷ついた子どもの部分が大人の心の中に残っていて、人生の足を引っ張る。
どうせ分かってもらえない、信じても裏切られるにきまっている、自分なんか価値がない、服従している方が楽だ、などの形で現れることもある。
たまたま周りに心ある人達がいて、トラブルがあっても助けてもらって、ぎりぎり綱渡りで生きている人。
会社の幹部とか何かの先生とか、立場のある役職にいるので、イライラをぶつけたり、感情的に揺れても、そういうものとして周りに受け入れてもらっている人。
それでも本人の心の内は、とても苦しい。何をどうすれば良くなっていくのか、迷子になっている。
自分で自分を褒めればいい?認めてあげればいい?
いやいやいや、それは酷だよ。
子どもは誰かに褒めてもらって、認められて、初めて自分を受け入れられるようになるんです。
信じることが怖い?
うん、そうだね。
だから、その根っこを癒すんです。
そうして、これまで知らなかった優しい新しい世界が生まれていく。
カウンセリングオフィス心葉は、今年の11月で8年目を迎えます。
あの時の自分の場所から、随分と遠くまで来たような。
かと思えば、いやいや、まだまだでしょ、と思う自分もいて。
進化?進歩?
んー、言い方は何でもいい。
とにかく、人を癒して、人生の次のステップに繋がって、そうしてそれが世の中を良くしていくことに繋がったらならば、本望かな。
先に継続率は91%と書いたけど、そう、まだまだだよね。
この先、100%になる日が来るかどうか分からないけど、そういうとこを目指していることを誰かが理解してくれなかったとしても、僕はこの道を行く。
世の中は凄いスピードで変わっていく、それに伴って人も変わっていく。
だけど、人が求めていることの本質は変わらない。そこを見据えて、人が人をケア出来る世界を創っていく。
そう、まだ誰も見たことがない世界を。